試験の記憶(測量士補編)

測量士補試験の時の話をしてみようと思う。なにせ初めての資格試験だったので心配だった。どれだけしていいかわからず、過去問を繰り返し回し続けていた。年度ごとに問題を解いていっていたのだが、試験まであと2カ月というところで、ほとんど間違うことが無くなっていた。でも実際どんな問題が出るかはわからなかったので、ひたすらに続けていた。今考えてみたらその時点で出来上がっていたのかもしれない。
試験当日が来た。会場はある大学だったので、公共交通機関が整っており、電車やバスで時間どおりに行ける場所であった。試験は午後からであったが、行ったことがなかったので、用心して下見がてら朝早くから電車で行った。最寄りの駅で降り大学行きのバスに乗り込んだが、僕以外は大学生とおもわれる2組だけであった。サークルのために大学に行くと思しき男女が楽しそうに談笑しながら乗っていた。僕はその光景をなんとなく見ながら、どこで降りるのかとiphoneで確認し、間違わないようにだけ注意して静かに座っていた。大学前のバス停が近づいてきた。学生が降車ボタンを押し降りることを彼女に確認していた。バスが止まった。学生たちがすべて降り切ったところを確認して、最後にバスから降りた。歩けばすぐ校門前である。大学に入ってみた。大学のキャンパスは、何年ぶりだろうか?大学を卒業してからかなりの年月が経っていた。ここの大学は初めてだが、なぜかなつかしい気分になった。出来れば大学生に戻ってみたいとなんとなく思った。大学は休みだがいくつかのサークル活動はあるみたいで大学生がちらほら見られた。午前中は測量士の試験があり、黒ずくめのスーツを着た人が資格試験の案内看板の近くで立っていた。まだ昼には早いが、食事をとっておこうと思い大学から出て店をさがした。iphoneで検索すると近くに中華店があるようなのでそこに行ってみた。中に入ると客は僕とあと2,3人いるだけだった。そこの女将は愛想がよく親しげに話しかけてきた。そこで僕は大学に試験を受けに来たことを告げた。そうかそれなら今日は客が多くなるかもしれないなとマスターは景気よくフライパンを振っていた。定食を頼んだが思ったより量が多くやはり大学近くの店は量が多いのだなと妙に納得し店を出た。
他に行くところもないので大学に戻り、試験会場につかわれていないところを探しその建物に入った。そこにはガラス張りで広い自由スペースのある場所があり、中には大学生が数人いるだけだった。僕も空いている椅子に腰かけ、やることもないのでテキストを開けて読んでいた。するとだんだん試験に来たと思われる人々が入ってきて見る見るうちに一杯になった。僕はそのまま椅子に座り、テキストに目を通していた。試験会場が開く時間になった。その建物を出るとキャンパス内は人でいっぱいだった。こんなに受験生がいるのか。あの中華料理屋は儲かったかもしれないなと思った。門の入り口では資格スクールと思われる人がビラを配っていた。僕は試験会場に足早に向かった。自分の受験番号を確認して、教室に入り席についた。いろいろな年齢層の人がいた。高校の学生服を着た人やもう70歳は超えているんじゃないかと思われる人、多くの老若男女がこの試験を受けに来ているようだった。目を閉じて開始を待った。試験官が入ってきて説明を始めた。そこで初老の男の人が質問した。小さい文字が見えないのでルーペは持ち込んでいいのか。もちろんいいですとの回答だった。やっぱり資格に年齢的な限界はない。どんな年齢になろうとも挑戦をつづけるのは大切なことだ。
試験が始まった。初めての試験でもあり自分が思っていたより緊張感が半端ない。なんとか心を落ち着けテストを解き始めた。三分の一くらいでようやくペースを掴んできて、最後まで一気に解いた。もう一度見直しなおしてみた。わからないところもあるが、合格点は超えてそうだった。ひととおり確認したところで時計を見るとまだ40分くらい残っていた。あと30分のところで退出してもいいとの試験官の合図があった。何人かが次々退出していく。僕の前の60歳くらいの男の人もスッと退出していった。どうしようか迷ったが僕はテスト用紙が欲しいこともあり最後までいることに決めた。そして時間まで静かに待った。試験終了。わからないとこもあったがまずまずできた感じだった。門前のビラ配りの人を避けながら大学を出た。バス停のところで乗ろうとしたが人がすごくなかなか乗れそうになかった。地図を見ると歩いて駅まで行けそうである。先を見ると歩いて帰ろうとしている人が結構いる。僕もそうしようと考えた。たまたま前を歩いていた男の人について行った。その人は歩くのが早かったが、自分も必死について行った。この人も多分駅に向かっているに違いないと信じ地図は確認せずにひたすらついて行く。何人かの集団を抜かしながら黙々と歩いた。駅近くまで来たところでその人はサッと右に曲がっていった。地図を見るともうすぐだった。ありがとう知らない人。おかげで早くつけた。僕は無事に駅に着いた。自動販売機で炭酸を買い一気に飲んだ。額の汗を拭いてから、妻にまあまあできたとLINEを送った。よかったね。お土産買ってきてくださいと返ってきた。駅中で何か甘いものでも買って帰るか。気持ちのいい疲れだった。

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