危険物取扱者試験当日
その日は、いつも通り早く目が覚めた。試験には早すぎたが、なぜか家族が起きる前に行ったほうがいいような気がしていた。静かに布団から出て、静かに身支度を済ませた。静かにしているつもりあったが、横に寝ていた息子が目を覚まして、下に降りてきた。まだ朝が早いから布団に戻るようにといったが、いつもの日曜日の朝はゲームの日であることを体で覚えている息子は容易には受け入れてくれなかった。そこで、妻の部屋で寝ることをすすめてやっと説得に応じてくれた。息子を妻のベッドに送りこみ、スゴスゴと家をでた。
外はまだ暗かったが、車で家を出た。高速を走りながら、今日の試験のことを考えていた。今回で4回目の資格試験、ハードルも高くなく仕事にも直接関係がない、もしかしたら人生においても関係がないかもしれない資格、まったく緊張感がなかった。でもそんな関係のない資格をとることになった自分を滑稽に思ったりもした。すでに資格をとることが目的になっている、資格に合格するということはこんなに人を魅了するものなのか。もちろん必要で資格を取る人もそれなりの数いてるのだろうけど、自分のように関係ないが役に立つかもしれない程度で取る人もかなりいてるだろう。だから、資格ビジネスは成り立つのだろうとか試験に関係のないことを考えながら会場まで車を飛ばした。
しばらくして会場についた。会場の駐車場には1台も車がなく時計を見ると試験まで2時間近くあったので駐車場に車を止めてシートを後ろに倒した。テキストを読もうと思ったがなんとなくけだるく読む気にならなかったので目をとじてシートに体を預けた。気づいて目をあけると朝日が目に入ってとてもまぶしかった。慌てて時計を見ると試験開始1時間前であった。駐車場には車は自分のも含めて2台止まっているだけであった。車のシートを戻し、車の外に出た。冷気が体をつつみ急激に体が冷やされ身震いした。試験会場の会館の前まで行ったがまだ開いていないみたいだった。
まだだれも来ていないのだろうか。しばらくその前でぶらぶらしていると玄関前に白の軽トラが止まった。その助手席から30代くらいの女の人降りてきて、自分を見つけ頭を下げてくれた。僕も釣られるように頭を下げた。その女の人はすぐに会館の表玄関のドアを開けてくれて、僕に試験を受ける方ですかと聞いてくれた。僕はそうですと答えると、女の人は親切に仲間で案内してくれて受験番号を見て、試験会場の部屋を詳しく教えてくれた。僕は彼女にお礼を言って案内されるままに試験の部屋まで歩いて行った。当たり前だが部屋にはまだだれも人がいなかった。中に張り出されていた注意書きをiphoneの写真に収めて自分の席を探した。後ろから3番目のテーブルであった。席に名前が貼ってあったので、周りの席の名前も何となく見てみた。すると斜め前の席が自分にこの資格を取ることを進めてくれた後輩の席だった。受験番号は自分の一つ前だった。僕は自分の椅子に座って前のホワイトボードをボーと見つめていた。しばらくすると受験生が入ってき始めた。白髪の男性から、金髪のお兄ちゃんまで年代は様々だった。ただほとんどが男性ではないかと思われた。すると後輩が入ってきた。自分を見つけると笑って頭を下げた。後輩の話によると駐車場に止めて30分くらい寝ていたらしい。僕が会場に入ってから、来たのだろうと思われた。後輩と話をしているうちに、試験官が入ってきた。後輩は前を向き、僕も姿勢を正して椅子に座りなおした。試験官の説明が始まった。そして時刻が来た。さあ試験の始まりである。まず名前と受験番号をマークシートに正確に書くことに心がけた。そして、問題に目を通した。最初は法令だが、やってきた過去問と比べて断然簡単だった。そのあと、化学・物理、性質と進めていったがほとんどわからないところがなかった。サクサクと進んだ。そして見直してみた。すると化学・物理のところで1問迷うところがあった。昨日やった静電気の問題だが、どっちなのか思い出そうとしたがわからなかった。そうしているうちに試験官が途中退出できるとの合図があった。僕は最後まで足掻くつもりだったので、迷っている問題を考え続けたが、やはり昨日の記憶が戻ってきそうになかった。すると横の20代とおもわれる男性は机の上のものをかたずけて会場から出て行った。彼は、まったく動いてなかったように思われたのだが、簡単だったのだろうか。前を見ると後輩は膝に手をおいて前を向いて座っていた。彼ももう出来ているようだった。時計を見るとあと40分近くもあった。問題をもらえるかもしれないので最後までいようと思っていたが、これは待ちきれないと思った。最後の1問は正解と思われるものをマークして机の上のものをかたずけて、席を立った。解答用紙と問題用紙を試験官に預け会場を出た。外にでると試験を途中退出した人たちがまだ試験を受けているであろう知り合いを待っていた。口々に簡単だったといって笑っていた。僕も後輩を待とうと思ったが、いつ出てくるかわからなかったので帰ることにした。
さあ昼ごはんは何にするかなと考えながら車を走らせた。1時間ほどたったところで、吉野家を見つけそこで食べようと思い駐車場に車を停めた。iphoneをあけてみると返信が来ていなかったので後輩はもう終わっているかどうかLINEしてみた。すると彼も早めに帰ったらしく、僕が出た後にすぐ帰ったとのことだった。最後までいれば問題がもらえるのか気になっていたので後輩に聞くと、それはもらえないようだった。じゃあ出てきて正解だったかもしれないなと思い車から出た。大きく背伸びをして、今日は特盛・ツユダクにしようと決めて店に入っていった。
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